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安倍元首相のアフリカ外交 元大使岡村善文氏(57) 産経新聞25.5.15

四国ビジョン検討(8)安倍元総理がアフリカで渾身のシュート放つ…「肝心な所で決める」強さに感嘆

《安倍晋三総理が2014年1月、アフリカに向かい、コートジボワール、モザンビーク、エチオピアの3カ国を訪問した》


  • 安倍氏、エチオピアで演説。

安倍総理はエチオピアの首都アディスアベバにあるアフリカ連合(AU)本部で、政策演説を行いました。日本の総理がAU本部で演説するのは珍しい。総理はアフリカ歴訪に際し、それまでの総理の外国訪問ではあまり例を見ない、とても効果的な工夫を盛り込みました。それは、経済代表団を同行させたことです。事務方や報道陣を乗せた政府専用機とは別に、もう1機を飛ばし、日本の経済界の重鎮たちを乗せました。一流企業のトップ、つまり会長や社長の方々です。


安倍氏の深慮遠謀 3カ国それぞれで、総理は政治日程とは別にビジネス・イベントを開催し、アフリカ側の企業や経済閣僚と交流を重ねました。それだけではない。彼は各国首脳との会談に必ず、何人もの会長や社長を同席させた。2国間会談の様子をじっくり見てもらった後、1人1人を大統領や首相に紹介し、握手の様子を写真に撮らせたのです。


《ここに安倍総理の深慮遠謀があった、という》


こうした写真は、もちろん会長・社長たちの元に届けられます。写真は必ず、企業の会長室や社長室の壁に飾られるでしょう。社内報にも載るなどし、多くの人々の目に触れます。会長・社長の皆さんは、世間が語る「貧しいアフリカ」と全く異なる、アフリカの元気な姿を自身の目で実際に見たし、総理と一緒。必ずや、どこかで話題にします。


「君、アフリカに行ったことあるか?」大企業では、アフリカ関係のビジネスは必ずしも主役ではありません。ところが企業のトップがアフリカに赴き、帰ってきて社内で部長たちに言ったことでしょう。「君、アフリカに行ったことがあるかね? 面白いぞ」と。これで部長たちは、アフリカを研究せざるを得なくなる。それまで地道にアフリカとのビジネスを開拓してきた社員も、社内で脚光を浴びるようになるのです。


  • 「母の誕生日」《もう1つ感心したのは、安倍総理のユーモアのセンスという》


訪問の半年後(14年6月)、ブラジルでサッカーのワールドカップ(W杯)が予定されていました。訪問1カ国目のコートジボワールは、たまたま日本と同じグループ。しかも、初戦での顔合わせが決まっていた。安倍総理は首脳会談でワタラ大統領に話し掛けました。「両国の試合日はちょうど、私の母の誕生日でしてね…。私としては母の手前、日本に勝たせたいが、コートジボワールとしては、負けるわけにはいかないだろう。そこで1つお願いがある。この試合を引き分けにしませんか?」大統領は大いに相好を崩し、「それでは、『引き分け』という首脳合意にしよう」と応じました。


こうして2人は両チームのユニホームを交換し、首脳会談が終わりました。


ちなみに、試合本番の前半は「合意」が守られ、1対1だったのです。しかし、後半に名選手ドログバが出場した途端、日本選手の動きが悪くなり、1点を献上。残念ながら、日本が敗北を喫しました。


盛り上がる「アベ」「アビィ」会談


《エチオピアのアビィ首相との首脳会談では、安倍総理は1964年東京五輪で活躍したアベベ選手を持ち出した。貧国・エチオピア出身のアベベ選手はそれまで、シューズを履かずに驚異的な記録を打ち立て、〝裸足の英雄〟との異名を持っていた》安倍総理は会談でこう切り出しました。「私はそのころ小学生だった。学校では誰もがアベベ選手の話をする。私は名前がアベなので、『アベベ』と呼ばれるようになりました」エチオピア首相も名はアビィです。「アベ・アビィ」で盛り上がったのは言うまでもありません。


  • 安倍氏「僕はバスケ部だ」《特筆すべきはもう1つの訪問国、モザンビークでの出来事だった》


好成績を挙げるモザンビーク女子バスケットの代表チームに、日本側からバスケット関連器材を提供する式典を行いました。その最中、安倍総理は傍らのモザンビークの選手に、「ちょっとかしてごらん」と言うと、ボールを受け取ったのです。数回ドリブルしたかと思うと、10メートルも離れたゴールに向かってシュート。何と、吸い込まれるようにゴールが決まりました。満場、大喝采です。


「僕はバスケ部だからね…」と安倍総理は平然としたもの。肝心なところで逃さず決める、安倍総理の凄さに感嘆しました。(聞き手 黒沢潤)


<おかむら・よしふみ> 1958年、大阪市生まれ。東大法学部卒。81年、外務省入省。軍備管理軍縮課長、ウィーン国際機関日本政府代表部公使などを経て、2008年にコートジボワール大使。12年に外務省アフリカ部長、14年に国連日本政府代表部次席大使、17年にTICAD(アフリカ開発会議)担当大使。19年に経済協力開発機構(OECD)代表部大使。24年から立命館アジア太平洋大学副学長を務める。

以上

 
 
 

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